「離婚」って何?【その7】

テーマは「離婚」で,前回に引き続き,「養育費」あるいは「婚姻費用」(離婚に前後して支払われるべき月々の生活費)のお話をしています(養育費と婚姻費用の違いについては,前号をご覧ください。)。

今回は,①養育費や婚姻費用がどうやって具体的な金額(「月○万円」)として決まるのか,②具体的に決められた養育費や婚姻費用の獲得をどういう方法で実現するのか,のうち,①についてお話しします。

養育費や婚姻費用をどうやって決めるかですが,まずは夫婦間での話し合いということになります。

といっても,何を基準に話し合って決めたらいいかわからないというのが,正直なところだと思います。お子さんを監護養育している方の親は,より多い金額にしてほしいと思うでしょうし,他方で支払う方の親としては,より少ない金額にしたいと思うため,そのままでは話し合いがつかないかも知れません。

そこで,そうした話し合いの際に,金額を定める基準(物差し)として大変参考になるのが,家庭裁判所で作成されたいわゆる「算定表」というものです。これは,あるべき養育費・婚姻費用の算定を目指して作られたもので,話し合いをする時点での夫婦それぞれ収入額子ども数・年齢等の事情(数字)をあてはめると,養育費・婚姻費用のおおよその金額がわかるように作られています。例えば,特別な事情がなければ,「子どもさんが○人いてそれぞれ○歳で,夫婦の(税込)年収がそれぞれ○○○万円,○○○万円だったら,この時点での養育費・婚姻費用は月○万円くらいになる。」ということがわかるようになっています。

なお,夫婦それぞれの(税込)収入は,例えば給与所得者の方であれば,いわゆる「源泉徴収票」の総支給額の欄を見ることで,わかると思います。

この「算定表」は,家庭裁判所には備え置かれていて,次回お話しするように,養育費や婚姻費用の取り決めの方法として家庭裁判所の調停での話し合いを選んだ場合,その席上では,調停委員からこうした表を示され説明されることもあるかと思います。もっとも,この「算定表」は,秘密のものではなく,書籍として刊行されています。ちょっと大きめの本屋さんの「生活の法律」コーナーでいわゆる「離婚もの」の本を見てもらうと,その巻末に「養育費」とか「婚姻費用」というタイトルの,グラフのような方眼用紙のような「表」が掲載されているかと思います。これが「算定表」です。また,パソコンを使う方は,インターネットでもこれを検索できるのではないかと思います。

このように,養育費や婚姻費用の金額を決めるにあたっては,「算定表」を基準(物差し)に夫婦で話し合っていくことになると思われますが,これを基準にしつつも,別に考慮した方がいい事情もあり得ます。例えば,別居して家を出た夫が,妻子の住んでいる自宅の住宅ローンを(自分が別居後借りて住んでいるアパート代のほかに)支払っているという場合は,妻子の家賃相当の生活費を負担していると考えれば,養育費・婚姻費用の一部として加味されるのが適当でしょう。

その他,より詳しい話を知りたい,あるいは話し合いがまとまらない,どうしたらいいかわからない…という方は,そのたびに弁護士に相談されると,解決の糸口が見つかることもあるかと思います。

次回は,引き続き,②具体的に決められた養育費や婚姻費用の獲得をどういう方法で実現するのか,について,お話しする予定です。

以 上


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