「離婚」って何?【その4】

前回に引き続き「離婚」について,今回は,離婚と「親権」という,離婚に関して最も悩ましい問題のひとつについてお話しします。

「親権」とは,親として子を監護,教育する権利義務の集まりのことをいいます。親権の具体的な内容としては,身上監護権(義務)と財産管理権(義務)に分かれるとされます。

民法上は,身上監護権の表れとして,居所指定権(821条),懲戒権(822条),職業許可権(823条)等が,また,財産管理権の表れとして,子の財産の管理権及び代理権(824条)が,それぞれ定められています。親が,子をいつくしみ,しつけをしながら心身共に健康に成長させるためには,こうした権限が必要だと考えられたからです。なお,いずれも「権利(権限)」の形で定められていますが,これらは親としての「義務」でもあるとされます。

こうした権利義務を有する親権者に「誰」がなるのかについて,民法上は,父母の婚姻中は「父母」がなるとされ(818条1項),この場合は父母の共同親権となります(818条3項)。

他方で,父母が離婚するときは,「父母の一方」が親権者となるとされます(819条1項・2項・5項)。協議離婚をする際に提出する離婚届の記載欄にも,離婚に伴ない(それぞれの)子ども(達)の親権者が父母のどちらになるかについての項目があります。つまり,未成年の子ども(達)がいる夫婦が離婚するにあたっては,夫婦の「どちらか」に親権者を決めなければならないのです。

悩ましいのは,「夫婦間で離婚については合意に至っているが,親権者をどう定めるかについて争いがある」という場合です。こうしたご相談は,私の所にも多く寄せられます。

結論をいうと,こうした場合は,簡単には離婚はできないことになります。というのは,親権者が決まらないと,協議離婚をしようとしても離婚届を役所で受理してもらえないからです。

その場合,どうすればよいかというと…回答としては,離婚にあたっては夫婦でよく話し合って,親権者についての取り決めをきちんとするのが一番ということになります。とはいえ,「夫婦間で離婚については合意に至っているが,親権者をどう定めるかについて争いがある」というご相談のうち,かなり多くのケースは,夫婦の一方が実は①(感情的なしこりを含め)何らかの理由で離婚をしたくないと思っていたり,②離婚については実際に合意しているものの,親権を相手方に認めると発生する養育費や,その他離婚に伴ない発生しうる財産分与や慰謝料といったものの支払いはしたくないと思っていたりする等,実質的には離婚(に伴なう全体的な紛争の解決)について合意に至っていないケースであるように思えます。

そうした場合には,結局,調停や裁判の手続を用いて解決を目指さなければならない可能性が高くなってきます。

具体的には,家庭裁判所に調停【夫婦関係調整(離婚)の調停】を申し立て,裁判所(調停委員)の仲立ちを得て話し合い,その中で,離婚のみならず親権者についても夫婦で合意した内容を調停に反映させる必要があります。調停でも親権者の定めについての合意ができない場合には,親権者について父母のどちらになるかの審判が出されることになります(819条1項・5項)。

あるいは,調停(離婚調停)を不成立として終了させた上で,改めて家庭裁判所に離婚の訴えを提起し,その際に(養育費や財産分与や慰謝料とともに)親権者の定めについても合わせて請求すると,その訴訟の中で,合意ができれは和解によって,最後まで合意ができなければ最終的には判決によって,父母のどちらが親権者になるかが決められます(819条2項)。

つまり,大変な時間と労力が必要となる可能性が高くなります。

このテーマについては,次号も引き続きお話したいと思います。

以 上


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