前回に引き続き「離婚」について,今回は,離婚に伴う「氏」や「戸籍」の変動について見てみましょう。
まず,離婚の効果である夫婦関係の解消に伴う氏(姓のこと)の変動についてお話しすると,民法上,婚姻の際に夫又は妻の氏を名乗った者(現状では,妻が夫の氏を名乗っているケースが多いと思われます…その場合は妻)は,離婚により,そのままにしていると自動的に婚姻前の氏に戻ります。
もっとも,社会生活をする上で必要があることに配慮し,離婚の日から3ヶ月以内であれば,戸籍法に定める届出をすることで,婚姻時の氏を名乗り続けることができようになっています。ここにいう「社会生活をする上で必要がある」とは,例えば妻が離婚に伴い未成年の子を監護養育していく際に,妻(母)と子で氏が異なってしまうと困る,というケースがあると思われます。
他方,同じく離婚によって母と子で氏が異なってしまっては困る,かといって,自分が婚姻中の氏を名乗り続けたくはない,という場合はどうすべきでしょうか。その場合は,子(子が15歳未満であればその親権者)が,家庭裁判所に申立て(子の氏の変更許可申立て)をし,裁判所の許可を得られれば,子が母の氏を名乗ることができるようになります。
次に,離婚の効果である夫婦関係の解消に伴う戸籍の変動についてお話しすると,多くのケースで,離婚に伴い戸籍が変動するのは,婚姻の際に夫の氏を名乗った妻の方です(こうしたケースでは,夫が戸籍の筆頭者になっています。)。その場合,妻は,婚姻前の戸籍に入る(復籍する)か,新戸籍を作ることになります。
ところで,戸籍法では「父の氏を称する子は父の戸籍に入り,母の氏を称する子は母の戸籍に入る」とされているのですが,ここで気をつけたいのは,妻(母)が離婚に伴い子を監護養育しても,また,子の親権者となった場合でも,それによって自動的に子が夫(父)の戸籍から妻(母)の戸籍に移ることはない,ということです。その場合,子が妻(母)の戸籍に入るためには,やはり家庭裁判所に申立て(子の氏の変更許可申立て)をし,裁判所の許可を得て,子の称する氏を母の氏に変更した上で,(裁判所の許可書をもって)市町村役場に入籍届を提出する必要があります。
もうひとつ気をつけたいことは,離婚後の妻(母)が婚姻時の氏を名乗り続けることで,その氏が婚姻中の氏と同じであっても,子が離婚後の妻(母)の戸籍に入るためには、さきほどの「子の氏の変更許可申立て→入籍届」の手続が必要だということです。つまり,妻(母)が婚姻時の氏を名乗り続ける場合でも,その氏はあくまで「母の氏」であって,子は元々の「父の氏」を名乗っている状態である,ということです。
…といっても,文にすると,なかなかピンと来ませんね。
もう少し分かりやすく,もう少し詳しく知りたいという方は,弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。また,戸籍のことについては,インターネットで各市町村のホームページを見ると,わかりやすく説明してあるものがあります。
以 上