前回に引き続き,「離婚」についてです。今回は,離婚についてのデータを見てみましょう。
まず,厚生労働省の統計を見ますと,日本全国で離婚した夫婦(離婚件数)は,おととし平成24年は23万5406組あるそうです。巷では,『日本では2分ちょっとに1組の割合で夫婦が離婚しています。』などという説明がされることがあります(1年が60秒×60分×24時間×365日=3153万6000秒なので,これを離婚件数で割り算すると,2分ちょっとになる,ということなのだと思います)。
離婚件数は,昭和45年(今から44年前)は9万5937件だったのが,その後ほぼ右肩上がりで増え続け,平成12年には3倍の28万9836件に達したのですが,その後は,毎年減少や横ばいを繰り返し,現在に至っているようです。
次に,裁判所の統計を見ますと,平成23年の1年間に全国の家庭裁判所で受け付けられた人事訴訟事件のうち,離婚に関する訴訟事件は1万0045件であり,これは全体(1万1389件)の88.2%を占めるそうです。
そして,離婚に関する事件が訴訟(裁判)に持ち込まれると,その審理には平均して11.1ヶ月がかかり,当事者双方が関与して最終的に判決が出された事件については,解決までに平均して15.5ヶ月(1年3~4ヶ月)がかかっているとのことです。
私の経験からしても,ご夫婦お互いに言い分があり,争われる(お互いが譲れない)ポイントがあるケースでは,裁判になってから1年前後かかってしまっていることが少なくないと思います。
さらに,離婚については訴訟の前段階とされる調停についてみますと,平成24年の1年間に全国の家庭裁判所で受け付けられた離婚調停の件数は,4万8771件あり,平均的には3~5回の話し合いの期日(3~6ヶ月の期間)を経た結果,そのうち約半分の2万4089件が,調停成立により離婚に至っているようです。
なお,離婚については調停が訴訟の前段階と言いましたが,これは,離婚や認知など,家事調停を行うことができる事件については,原則として訴訟を起こす前に調停の申立てをしなければならない(家事事件手続法257条。「調停前置主義」)ためです。
こうしたデータを見ての印象ですが,離婚件数や訴訟・調停の件数については,私は「離婚や紛争の数が多いからよくない」とか,「少ない昔の方がいい時代だった」とはいえないと思います。現代の方が,夫婦お互いが「離婚したい」という意思を明らかにしやすい社会環境に変わってきているという考え方もできますし,特に女性の社会進出による収入の確保やその増加あるいは社会保障の発展により,昔はとても多かったと思われる「離婚したくても経済的に自立できないから離婚できない」というケースが随分と減ってきた結果であるともいえるのではないか,と思っています。
とはいえ,ひとたび「離婚」するとなると,未成年のお子さんがいる場合にはその親権や養育費や面会交流をどう取り決めるか,結婚後夫婦で築いてきた財産がある場合にこれをどう分けるか(財産分与),相手方に慰謝料を求めるか,お互いの年金の点数をどうするか(年金分割)…といった,お子さんの幸せを第一に考えながらご自分の今後の人生のあり方を決めなければならないという,実に重い悩ましい問題への対応が必要になります。
そうした中で,実にたくさんの人が,離婚を求める決断をするかどうかを悩み,そのうち毎年20万組以上の夫婦が協議で離婚し,あるいは調停や裁判といった手続を経てかなりの長い時間とエネルギーをかけて,離婚に向けての話し合いをしていることがわかります。
こうしたデータからも,離婚の問題が,私達の生活に身近で,しかも重要な問題であることがわかります。
以 上