「離婚」って何?【その14】

テーマは「離婚」で,今回は「財産分与」についてお話します。

1 財産分与とは

民法には,離婚をした者の一方が相手方に対して財産の分与を請求できるという定めがあります(768条1項・771条)。こうした権利を一般に「財産分与(請求権)」といいます。

この財産分与は,配偶者に対する離婚後の生活保障の意味や,慰謝料の意味でなされることもありますが,メインは結婚中の夫婦共同財産の清算としてなされるものだとされます。

この「夫婦共同財産の清算」とは何か,ですが,いわば結婚期間中に夫婦が協力して築いた財産をもちより評価して,その価値を半分ずつに分け合うものだとイメージされると,間違いがないのではと思います。

以上から,財産分与の対象となる「財産」とは,結婚期間中に夫婦双方が協力して築いた財産とされます。ところで,法律相談をお受けしていると,『妻(夫)は専業主婦(主夫)でずっと働いていなかったし,今ある財産を築いたのは私だけだから,この財産は全部私のものですよね?』とか『マイホームの名義は私だし,住宅ローンも私がすべて支払ったのだから,これは私だけのものでしょう?』というお尋ねが,時々あります。

この点ですが…結婚期間中に築かれた財産であれば,その部分の財産は半分ずつに分けられることになるだろうと思われます。専業主婦(主夫)の場合でもその期間中に夫婦で築いた財産は原則として折半となると思われますし,不動産や自動車のように登記登録があり,その名義が夫(妻)のいずれかであったとしても,名義が一方のみであることを理由にこれを財産分けしなくてよいことにはなりません。

他方で,独身時代(結婚前)からそれぞれが所有していたことが明らかな財産や,結婚期間中に取得した財産でも相続等によるものは,財産分与の対象として離婚時に折半される財産からは外れます(特有財産と言ったりします。)。これらは,結婚期間中に夫婦双方が協力して築いた財産とはいえないと考えられるからです。

2 財産分与の手続

民法には,財産分与の協議がまとまらない等の場合には家庭裁判所に財産分与についての判断を求めることができるものの,離婚の時から2年を経過するとそれができないと定められています(768条2項)。

こうした定めから,財産分与請求権は,離婚後(離婚と同時)から2年の間に限って,(夫婦双方の)協議や(家庭裁判所の)調停・審判を経ることで成立すると考えられています。この「離婚から2年間」の制限は,ぜひ頭に入れておいていただければと思います。

ちなみに,前号までお話しした「(離婚による)慰謝料」は,基本的には離婚後3年が経過するまでに請求すべきとされます(民法724条)。

3 離婚にあたって解決すべき課題として,若いご夫婦では,お子さんの親権や監護権それに養育費が大きなテーマとなりやすいのに対し,婚姻期間が長いご夫婦の場合は,むしろこの財産分与が大きなテーマになりやすいです(結婚期間が長いと,夫婦で協力して築いた財産も多くなりやすいため)。

財産分与については,詳細を詰めていくと,色々悩ましい問題が出てきます。例えば,離婚後に相手方が受け取る予定の退職金は含まれるかとか,多額の住宅ローンが残っている自宅をどう評価するかとか,先ほど申し上げた「結婚期間中に夫婦が協力して築いた財産をもちより評価して,その価値を半分ずつに分け合う」といっても,実際にどうやって「分け合う」のか,等々です。

財産があったらあったで悩ましいですが,こうしたことでお悩みの方は,一度弁護士に相談されてみたらよいと思います。

以 上


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