「離婚」って何?【その13】

テーマは「離婚」ですが,「離婚原因」のうち不貞行為について,不貞をされた側の配偶者と不貞の相手方との関係がどうなるか,補足してお話しします。

1 不貞をした配偶者との関係

(1) 「不貞行為」とは,配偶者のある者(A)が自由な意思により配偶者(B)以外の者(C)と性的関係を結ぶこととされています。ここでの「性的関係」の意味ですが,典型的には,異性との肉体関係(性交渉やこれに極めて類似した行為)が挙げられます。

実際の裁判で「離婚原因」ありとして離婚が認められるケースとしては,こうした性的関係が一定程度継続していることが,(配偶者Aがそのことを認めない限り)「証拠」によって裁判所に認定される場合であること,そうした「証拠」を揃えるのが実は思ったよりも大変なことは,前号でお話ししたとおりです。

(2) 仮に,配偶者Aに(継続的な)不貞行為があり,それによって夫婦関係がぶち壊しになったと裁判所でも認定してもらえるような状況になると,配偶者Bは離婚判決を書いてもらえる(裁判で離婚ができる)ことになるでしょう。

また,その場合には,夫婦関係を壊されてしまった配偶者Bは,壊してしまった配偶者Aに対し,不貞をされたり夫婦関係を壊されたりしたことで受けた精神的苦痛を損害として損害賠償請求をしていれば,そうした請求も認められる可能性が高いです。

このような,精神的苦痛を受けたことの損害賠償を「慰謝料」といいます。なお,慰謝料は,理論上は精神的苦痛が発生すれば請求し得るのですが,裁判で実際に慰謝料が認められるケースとしては,(不貞や暴力等の)離婚原因がある場合や(故意や過失による)人身傷害がある場合等,一定の場合に限定されるように思われます。

2 不貞行為の相手方との関係

(1) ところで,不貞行為は配偶者Aひとりではできませんから,その相手方(C)がいることになります。では,配偶者Bと不貞の相手方Cとは,どのような関係に立つのでしょうか。

(2)  仮に,配偶者Aと相手方Cとの間で(継続的な)不貞行為があり,それによって夫婦関係がぶち壊しになったと裁判所でも認定してもらえるような状況であれば,配偶者Bは,その相手方Cに対しても,不貞をされたり配偶者Aとの夫婦関係を壊され(そうになっ)てしまったことで受けた精神的苦痛を損害とした慰謝料請求が認められる可能性が高いです。

この点,裁判所の考え方は,「夫婦の一方(A)と肉体関係を持った第三者(C)は,故意又は過失がある限り,…他方配偶者(B)の夫又は妻としての権利を侵害し,その行為は違法性を帯び,他方配偶者(B)の被った精神的苦痛を慰謝すべき義務がある」というものです【最高裁昭和54年3月30日判決】。その上で,「合意による貞操侵害をもって,家庭の平和を崩壊させた場合には不法行為となるが,悪質な手段を用いて相手方の意思決定を拘束した場合でない限り,その主たる責任は不貞をした配偶者(A)にあり,不貞の相手方(C)の責任は副次的なものである」という考え方もとっているようです【東京高裁昭和60年11月20日判決】。

(3)  まとめると,不貞の相手方Cは配偶者Bに対して慰謝料を支払わなければならない立場であることが原則ですが,その責任ないし支払額が,具体的ケースにより限定され得るという傾向にあると思われます。

例えば,不貞行為の内容(AとCのどちらが誘ったか,不貞の期間や回数,AC間でどのような行為がなされたか)とか,それにより配偶者Bが配偶者Aと離婚したり,別居に至ったりしたかとか,配偶者Aが配偶者Bに対してどのような慰謝の行動をとったかとか,さらには相手方C自身の財力等,色々な具体的な事情をふまえて,その責任の程度が判断されることになるでしょう。

3 ところで,不貞関係については,例えばCにも配偶者(D)がいた場合には,DからすればAが不貞の相手方にあたりますから,DからAに対し慰謝料請求がなされる可能性も十分あります。以上のように,不貞行為のケースは,各関係者(ABCD)の利益状況が錯綜し,また,各関係者がそれぞれ今後どのような対応をとるべきか悩ましい状況になる可能性があるケースといえます。

こうしたことでお悩みの方は,一度弁護士に相談されてみてもよいでしょう。

以 上


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