「離婚」って何?【その10】

テーマは「離婚」で,「離婚原因」のお話をします。

1 離婚原因とは

民法770条1項は,離婚判決をもらうための裁判(離婚の訴え)を起こす条件として,「配偶者に不貞な行為があった」(1号),「配偶者から悪意遺棄された」(2号),「配偶者の生死三年以上明らかでない」(3号),「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」(4号),「その他婚姻を継続し難い重大な事由がある」(5号)ことを求め,こうした事情がある場合に限って,離婚訴訟を起こすことができると定めています。

このような,離婚訴訟を起こし,裁判所に離婚を認める判決を書いてもらうための条件であるこれらの事情(民法770条1項1~5号)を「離婚原因」といいます。

2 協議離婚なら,すぐにでもできる

「生存中の夫婦が婚姻関係を解消すること」である離婚は,その効果の重大性から,戸籍法に定める届出がなされないとその効力が発生しないという制限はありますが,当然ながら,夫婦お互いの合意があれば,することができます。これを一般に「協議離婚」といいます。

具体的には,協議離婚は,役場に備付けの離婚届の用紙に,当事者(夫婦)双方及び成年2人の証人がそれぞれ署名・捺印して,住所地等の市区町村役場に届け出て受理されれば,できます。

3 裁判離婚は,いろいろと大変

他方で,離婚したいけれども相手方がこれに応じてくれない場合(相手方が離婚届に署名捺印してくれない等)には,離婚したい人がその意思を貫いて相手方と離婚をするためには,離婚訴訟を起こして,裁判所に離婚を認める判決を出してもらわなければなりません(これを一般に「裁判離婚」といいます。)。そして,離婚判決を得るためには,先ほどお話しした「離婚原因」が相手方にあることを主張し,これを立証して,裁判所にこれを認めてもらわなければなりません

しかも,こうした離婚訴訟を起こすにあたっては,原則としてその調停申立てをして,相手方との話し合いの機会を設けなければなりません(家事事件手続法257条。「調停前置主義」)。

このように,離婚調停を経て(調停が不成立となったことを受けて)離婚訴訟を起こし,お互いの言い分をきちんと出し合った結果判決となるケースでは,離婚判決が出される場合でも,合計すると1年6ヶ月くらいは裁判所での話し合いが続く可能性があります。こうした離婚訴訟に討って出ても,相手方に離婚原因がない(離婚したい理由が「性格の不一致」のみである等の)場合や,あってもこれを証拠によって証明できない(相手方が不貞行為をしていることは間違いないと思われるが,その証拠を提出できない等の)場合には,かえって離婚を認めない判決が出されてしまうことになります。

そこで,離婚をしたいけれども相手方が離婚に応じてくれないという人は,①相手方にこうした離婚原因があるか(これを立証できる証拠があるか),②離婚判決を求めて調停さらには裁判をすることによる,時間やお金や労力の負担にたえられるか,場合によっては③相手方に離婚に応じさせて,協議離婚という形で離婚するためにいい方法はないか等を,慎重に検討した上で行動を起こした方がいいと思います。そうした「見立て」についてのアドバイスは,弁護士からもらった方がよいかも知れません。

なお,離婚原因(民法770条1項)すなわち,①不貞行為(1号),②悪意の遺棄(2号),③3年以上の生死不明(3号),④回復の見込みのない強度の精神病(4号)及び⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由(5号)と言っても,③や④はともかく,①や②は分かるようでよく分からない言葉であり,⑤は具体的には何が何だかまったく分からない言葉です。

大雑把にいえば,「こんなことがあったら夫婦共同生活は続けていけないでしょう?」と言えるような事情,なのですが,次回以降は,こうした離婚原因の①~⑤について,詳しく説明していきます。

以 上


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