「結婚(婚姻)」って何?【その2】

今回は,「結婚(婚姻)」に近いものである「内縁」についてお話しします。

「内縁」を「法律学小辞典」で調べてみると,「社会的事実としては,夫婦共同生活体の実質を備えながら,婚姻の届出を欠くために法律上の婚姻とは認められない男女の関係」と書かれていました。

前回お話しした「結婚(婚姻)」との関係で説明すると,内縁とは「当事者がお互いに夫婦関係という法律関係に入っているが,戸籍法に定める届出がなされていないため,婚姻としての保護が与えられないもの。」という説明になるかと思われます。いわば『結婚(婚姻)マイナス婚姻届出』の状態であるとイメージしてもらえると,分かりやすいかも知れません。

このように,内縁は,あくまで「実態としては夫婦である」状態(①お互いが婚姻の意思をもっており,かつ②現に夫婦共同生活を営んでいること)を指します。そこで,①の点で,婚姻の意思がないいわゆる「愛人」関係(例えば法律上の配偶者がいる男性が,他の女性に対して住居や金銭を与えたりしながら性的関係を維持しているものの,婚姻の意思はない関係)や,いわゆる「同棲」関係(共同生活はしているものの,その時点で婚姻の意思がない関係)とは異なりますし,また,②の点で,いわゆる「婚約」(将来の婚姻の約束をすること)とは異なることになります。

内縁は,①お互いが婚姻の意思をもっており,かつ②現に夫婦共同生活を営んでおり実態としては夫婦の関係にある点では,法律上の婚姻と何ら変わりはないので,可能な限り(婚姻届出の本質や戸籍の記載と密接不可分なものを除き),法律上の婚姻関係に準じて,婚姻関係で認められる効果(保護)を同じく認める(準用する)扱いとされています。

詳しく言うと,前回お話しした,夫婦間で発生する「同居義務」や「協力扶助義務」を負い,また共同生活の費用を分担するものとされます。のみならず,内縁当事者も他方当事者に対して「貞操義務」を負います。

次に,追ってお話しする機会があると思いますが,関係の解消(法律上の婚姻にいう「離婚」にあたります。)に際して,お互い築いてきた財産があった場合にはこれを分け合うこと(これを「財産分与」といいます。)も認められていますし,相手方に不貞行為等の事情がある場合には,慰謝料請求が認められることもあります。

さらに,各種社会保障法の取扱い(扶養手当,健康保険,労働災害の遺族補償年金,公営住宅・公団住宅の入居者資格etc)においても,配偶者につき「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」を含むとし,内縁関係の当事者と配偶者とで取扱いが同じくされることが多くなっています。

他方で,内縁は,法律上の婚姻の要件である婚姻届出がされていないことから,婚姻届出の本質や戸籍の記載と密接不可分な点について,婚姻した夫婦であれば認められる効果が,内縁当事者では認められないことがあります。

その中で一番大きいのは,子どもの関係と,相続の関係です。

詳しく言うと,婚姻関係にない男女の間に生まれた子は,父親とは別々の戸籍(母親の戸籍)に入り,父親から「認知」されない限り父親とは法律上の親子関係(「非嫡出子」という。)が認められないという不利益を受けます(なお,法律上の婚姻における「嫡出推定規定(民法772条1項)」は,内縁関係にも類推されるのですが,これはあくまで事実上の推定にすぎないため,父親が認知をしない場合には,子どもの側から「認知の調停」を申し立てたり「認知の訴え」を提起する必要があります。)。

また,内縁の一方当事者が死亡した場合,他方当事者は,相続権を有しません。このことは,内縁関係がどれだけ長期間継続していても,また内縁当事者間の愛情や信頼がどれだけ強くても,変わりありません。死亡した内縁の一方当事者に相続人がただの一人もいない場合に,いわゆる「特別縁故者」としてその財産の分与の請求ができるのみです。これまで面識・交流のなかった甥や姪を含め,一人でも相続人がいる場合には,相続財産はその相続人が取得することになります。

こうした不利益を避けたい場合には,予め「遺言」により,財産を与えてもらう等の対策をして(もらって)おく必要があります(「遺言」についても,追ってお話しする機会があると思います。)。

また,内縁は,婚姻届出をしていないことから,外形的には夫婦(婚姻)関係にあるかはわかりません。そこで,内縁関係で認められる効果(保護)を主張する側が,内縁関係(実態としては夫婦であること)を立証していかなければならないという負担を負うことになります。これも,けっこう大変です。

次号では,「婚約」について,お話しする予定です。

以 上


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