「結婚(婚姻)」って何?【その1】

さて,今回のテーマは,その「結婚(婚姻)」についてです。

「結婚(婚姻)とは何か,説明しなさい。」と言われると,難しいです。

日本国憲法(24条1項)や民法(731条~771条等)では,「結婚(けっこん)」という言葉でなく「婚姻(こんいん)」という言葉が使われています。

そこで,広辞苑で「婚姻」という言葉を引いてみると,『結婚すること。夫婦となること。一対の男女の継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合で,その間に生まれた子供が嫡出子として認められる関係。民法上は,戸籍法に従って届け出た場合に成立する。』と書かれています。

…と説明されても,ピンとはこないですね。でも,結婚(婚姻)により生じる効果のうち重要なものを意識すると,おそらくこの説明が正しいのだと思われます。

民法上の「結婚(婚姻)」をあえて説明すると,「当事者がお互いに夫婦関係という法律関係に入ることを合意する契約であって,戸籍法に定める届出がなされないとその効力が発生しないもの。」ということになるかなと思います。

皆さんもご存知のように,元々は他人であった男女が「結婚(婚姻)」して「夫婦」になると,他人ではない特別な関係になります。

具体的には,夫婦は新たに戸籍を作り,婚姻の際に夫又は妻の氏を名乗るものとされますし,またお互いに相手方(「配偶者」といいます。)に対して「同居義務」(一緒に生活する義務)や「協力扶助義務(生活保持義務)」(協力し助け合う義務)を負い,特約がない限り資産・収入その他の事情に応じ婚姻費用を分担するものとされます。のみならず,夫婦は配偶者に対して「貞操義務」を負い,配偶者以外の男女との間で不貞な行為をしてはいけない(不貞行為は,刑事罰の対象にはならないが,民法上の不法行為として損害賠償責任が発生し得る。)とされます。

また,婚姻関係にない男女の間に生まれた子(「非嫡出子」とか「婚外子」という。)が,父親とは別々の戸籍(母親の戸籍)に入り,一定の場合を除き父親から「認知」されない限り父親とは法律上の親子関係が認められない等の不利益を受けるのに対し,法律上の婚姻関係にある男女を父母として生まれた子(「嫡出子」)はそのようなことはありません。交際していた男女が,子どもの妊娠を機に婚姻(婚姻の届出)を決断することが少なくないのは,こうした子どもとの関係での婚姻の効果を重視してのことと思われます。

これらの効果は,いずれも夫婦としての共同生活を続けていく上で守られることが必要なものとして定められているものですが,いずれも重要なものです。そして,こうした重要な効果が発生する行為である婚姻については,法律(戸籍法)で定めた方式に従ってなされたものだけが,婚姻として認められる(こうした建前を「法律婚主義」といいます。)ものとされました。具体的には,市町村役場に所定の「婚姻届」(証人2名の署名捺印が必要です。)を作成提出し,その内容のチェックを受け,受理されて初めて,婚姻として認められます。

ところで,「結婚(婚姻)」と似ているけれども違うものとして「内縁」というものがあります。「結婚(婚姻)」と「内縁」はどこが同じでどこが違うのか?はたまたいわゆる「同棲」との違いは?

これについては,また次号以降にお話します。

以 上


戻る